敬愛する埴谷雄高さんがこの世を去られてから、早くも五回目の命日を迎える仕儀とは相成りました。般若家の奉じる神道では〈五年祭〉の節目にあたり、２月１９日（火）の当日には御遺族により墓前での祭事が予定されています。そこで私たち世話人としては本年度のアンドロメダ忌をその〈前夜祭〉として、昨年同様アテネ・フランセ文化センターのご協力を得て２月１８日（月）夜に開くことと致します。演劇、映画、絵画、そして宇宙論と存在論をめぐるビデオ上映と文芸講演――と回を重ねつつ五回目を迎え、今回はかつてNHK教育TVで「独白『死霊』の世界」が五夜連続で放映された折に、本文朗読を担当された俳優の蟹江敬三さんにお願いして二時間近くにわたって『死霊』を読んで頂きたいと思います。
当夜の朗読テキストは従来の『死霊』の読み方にあえて挑んで、遺された全九章を三輪与志と津田安寿子との「私達の物語」として読み直すべく試み、推敲に推敲を重ねて独自に作成しております。むろん原文そのものの抜粋＝再構成で、恣意的な要約などは一切しておりません。世話人のなかの若い研究者たちによるこの作業を、さて泉下の埴谷さんは「悪意と深淵の間に彷徨いつつ 宇宙のごとく 私語する死霊達」と共に、いかにお聴きになられるのでしょうか。帝劇公演の間隙を縫って出演を快諾された蟹江敬三さんに感謝を捧げるためにも、この「獨誦実験」の一夜が満員となるようご協力のほどよろしくお願いする次第です。（なお会場の関係上すべて当日先着順のみとし、前売り予約などは致しませんのでご了解ください）
